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【コラム】環境を生かした園庭

日本は世界でも上位の森林大国である。国土面積の約7割が森林で、森林面積の約4割は人工林であり、そのほとんどがスギ、ヒノキで、国土面積の3割弱を占めている。東京都の森林面積順位は全国の中では低いが、多摩地方の奥へ行くほどに山が多く存在し、そのほとんどはスギ、ヒノキが植林されたものである。
今回はその奥多摩町にある、古里保育園の園庭整備プロジェクトを紹介したい。東京からJR中央線で立川駅に向かい、JR青梅線、奥多摩線に乗り換え古里駅で降り、駅前から続く斜面を登ること約10分程度の場所にこの保育園がある。

12年前に園舎の建て替えが完了しているこの保育園は山の斜面を削って平らにした土地に建っているため、園舎からの見晴らしがとても良い。園舎南側の平らな土地に園庭はあるものの、「子どもたちがもっとのびのびと遊べるよう園舎横の植樹林を利用して面白い園庭が出来ないか」と園から相談があり、今回の整備に至った。

その土地は大人でも何かにつかまらないと登れない程の急斜面で、直径30㎝~50㎝のスギの植林が不規則にあったが、ちょうど敷地中央にだけスギが植わっていなかった。下草は勢いよく伸びていたため、まずはこの下草を刈ることから始めようと園長先生と相談し、この作業は園児の保護者のみなさんにも手伝ってもらい、地域と園児たちの皆で作り上げる庭にしようと計画した。
2回に分けて下草を刈り、ようやく地面が顔を出したため、ここで初めて園庭計画の実現の可能性が見えてきた。それくらい、長い間野ざらしにされた土地だった。

この計画は当初から「古里っこぼうけんの森プロジェクト」と名付け計画を進めた。コンセプトは「五感を刺激し非認知能力を育てる庭」。自然界としっかりと結びつき育ち、子どもたちのみずみずしい感性や五感、鋭敏な創造性、感受性、知性を大切にし、さらに開花・発展することができる庭づくりを目指した。子どもたちが主役となれる庭づくりである。

既存園庭からの高低差は約8m、敷地面積は260㎡(78坪)と決して広い土地ではないが、斜面のため、数値以上に広く感じる。ぼうけんの‘森’プロジェクトなので、スギは全て残し他の樹木も出来るだけ残すよう計画した。

敷地中央には山の頂上付近から入れるネット遊具を配置、ネットの上を大勢の子どもたちが一度に駆け回るのに十分な広さ、約50㎡を設けた。ネットの支えは既存のスギにロープを結んだ。ネットと地面との間には、高さが約3mもある。ネットで跳ねるとスギの木も一緒に揺れ、自然と一緒に遊んでいるような感覚になる。ネットから斜面下を見ると景色も良い。大勢で一度に駆け回り飛び跳ねると大きなバウンドが生まれ、まっすぐ歩くどころか立っていることも難しく、リズムを感じ、身体全体で読み取り、合わせる必要があり、これが相当な運動量になる。

このネット遊具は当初、3歳児から大きい子どもたちだけで使用する予定をしていたが、低年齢児も年齢の大きな子どもたちが遊ぶ光景をみて意欲がわき、今では1歳児も急な階段を上りきって先生と一緒に遊んだり、0歳児も座って外の風を感じたりと、子どもたちに大人気の自然の中の大ハンモックとなっている。

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