共用部にこどもたちのサードプレイスを1【今寺保育園】
園舎の個性は共用部に表れるとよく耳にします。
共用部にこどもたちが楽しく集える場所や仕掛けを散りばめる事で、こども同士のコミュニケーションに対するモチベーションが高まります。
共用部を単なる移動や滞留の場と見るのではなく、保育の4領域である「空間」「時間」「コミュニティ」「方法」を当てはめることで、こどもたちが園舎内で過ごす時間が格段に豊かなものになるものと考えます。
今回は、共用部にそうした場を組み込んだ実例をいつくかご紹介したいと思います。
東京都青梅市にある今寺保育園は「ひまわりのような保育園」というコンセプトのもと、保育室に架けた4つのアーチ屋根が、南に顔を向け咲き並ぶひまわりのようなデザインとしています。
保育室の南面は緑溢れる園庭を一望するベランダを連続させ、こどもの主要な動線である廊下は北側としました。
この廊下のテーマは「裏庭」です。異年齢のこどもたちが自然と集まるような場所にしたいと考えました。
廊下幅は2m~4mの間で変化させることで界隈性をもたせ、北側の壁面には大きな楕円型の筒が中空に2m突き出す、不思議なこども図書館を組み込みました。
筒形であるため木製の床は湾曲しており、読書の態勢を取るのが難しいだろうか?とも思いましたが、完成後の様子を見ると、斜面に上手に腰掛ける子、仰向けで読む子、それぞれが思い思いの場所を見つけ読書を楽しんでいました。
案の定、斜面を駆け上ったり滑ったりというアクティビティもあり、静と動が混在する大らかな図書館となりました。
この様に3~5歳児保育室の並ぶ二階廊下には筒形こども図書館を組み込んだ一方、0~2歳児保育室の並ぶ一階廊下には、こどもが一人ないし二人で入れる大小7つのDEN(隠れ家)を並べました。
七色のパステルカラーで塗られた形の違う楕円の筒形で出来ているため、色や形でこどもたち一人一人、それぞれお気に入りのDENがあるそうです。
絵本やぬいぐるみを持ち込んで思い思いの時を過ごす親密なスモールスペースとなっています。
それぞれのDENには小さな丸窓がついていて、外界を見る覗き穴となっています。
ここでご紹介したのはほんの一例ですが、園舎設計において、共用部をいかに豊かにするかを常に考えています。
保育室でもない、園庭でもない、こどもたちの第三の居場所(サードプレイス)を散りばめることは、こどもの動きをイメージしながら進めるとても楽しい作業です。