幼稚園の中庭・ビオトープ環境1
ビオトープと言うと池や水の流れがある自然の庭をイメージし易いが、ビオトープ(Biotope、Biotop)はドイツで生まれた言葉で、ギリシャ語で「ビオ」は生命、「トープ」は場所を表す2つの言葉を合わせたもの。つまり、必ずしも水辺がなくてもビオトープであり、野生の生き物たちの生息空間と考えた方がよい。ただし、水辺があればより多くの生き物達が生息できる環境になることは間違いない。
現在、開発などで失われた自然環境を取り戻す運動があちこちで行われている。小学校や幼稚園、保育園、認定こども園でも、できる限り自然環境を生かした校庭や園庭づくりや園庭改造が行われている。
今回は、幼稚園の中庭園庭改造を紹介する。
本園の園舎は8m×16mの中庭をぐるりと囲むように廊下や保育室が配置されており、その中庭は人工池や豊かな植栽で構成され、中庭から園舎に入る自然光や風は従来から快適な空間であった。しかし今回、人口池の老朽化などが進んだため、中庭の半分8m×8mを改修するととなり、ここにビオトープ環境を作る計画に至った。
この中庭をより魅力的に、観る人々の心を動かすことのできる自然空間となるよう、理事長、園長、職員、皆でアイディアを出し合った結果、「コンセプト」が特に重要であると考え、再定義した。
近年、至る所で安価で丈夫な「外来」種の植栽を目にする機会が増えた。そこで、『地域の「在来」種を大切に考え、本来の日本の自然風景を可能な限り表現し、子どもたちの身近な場所に設置することで、ひとり一人の心象風景として長く大切にする』。これをコンセプトに掲げ、この中庭を「古和釜ビオトープ」と名付けた。
我々が園庭計画を行う際、「センス オブ ワンダー」という言葉を大切にしている。作家であり、学者であるレイチェル・ルイーズ・カーソン氏が提唱する、「神秘や不思議さに目を見張る感性が、子どもたちの成長過程において特に重要である」という考えに私たちは深く共感し、自然界に、また自分の内部に未知の領域があるということを、自然を通じ体感してもらいたいと考えている。
彼女の言葉から考える何より大切なことは、子どもたちのみずみずしい感性を大切にし、自然界としっかりと結びつき育つこと。つまり、子どもたちの心に働きかける園庭を目指し、植栽の配置や全体の構成、環境づくりの工夫が重要であると考えた。