ドイツの園庭アム・ジョーダン幼稚園(シュネベルディンゲン市)
私たちの事務所では、(公財)日本生態系協会が企画し毎年行われるドイツの園庭づくり視察ツアーに参加しています。日本において、平場に遊具が並ぶだけの園庭から、豊かな自然と融合した遊びの環境づくりに時代がシフトしようとしている中、それを突き詰めたドイツの園庭の姿は示唆に富んでいます。
このツアーでの様々な見聞や園庭の空間体験は、その後の私たちの園庭提案のあり方に背骨となるビジョンを提示してくれています。
視察先であるドイツでは、連邦政府の生物多様性国家戦略に基づいて「幼稚園の園庭/一緒に多様性を発見しよう」プロジェクトが行われています。幼児期に生物多様性の豊かな園庭で自然体験をさせることがいかに重要か、幼児教育の現場で、子育てをする家庭で、子育て施設の立地する地域住民の間で共感を得て、連携が図られている姿に感嘆を覚えました。
園内の自然環境の良し悪しは、保護者が園を選ぶ際の最重要な評価軸の一つだと先生方が口を揃えていたのが印象的でした。
今回は、このツアーで印象深かった園で見聞した一部をご紹介します。
アム・ジョーダン幼稚園(シュネベルディンゲン市、定員165名)
ガビー・リンディンガー園長が説明してくれた園庭づくりのプロセスに共感しました。
遊具が並ぶ「遊園地のような」園庭の当初プランに問題意識を持ち、抜本的見直しを行うことを職員全員で決意します。
どんな園庭がいいかと園児に問いかけることから着手、講師を招き職員、保護者、地域住民が参加するワークショップで車座の討議を行い新たなマスタープランを策定しました。それを基に地域から様々な材料の寄付を受け、職員・園児・保護者、地域住民が参加し「総力戦」で園庭づくりが行われました。
鳥の巣と呼ばれる園庭造形です。馬蹄形に二列の杭を打ち、杭の間に木の枝を積み重ねていくことで園庭に一つの親密なコーナーが生まれます。積んだ枝の隙間に様々な昆虫が棲息できるため生物多様性のしかけでもある。
多孔質な素材を詰めて蜂などの虫が巣をつくるようにした「虫のホテル」。蜂の減少などが自然界に与える影響が大きいと、今回視察した全ての園に「昆虫ホテル」は設えてありました。
リンゴなどの果樹が必ず植えられています。子どもたちは果実を収穫しジュースやジャムをつくります。一玉から得られる僅かな果汁から食材の貴重さを実感するといいます。