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保護者と作り上げる園庭【ろりぽっぷ学園】

近年みられる少子化に伴い、特に郊外に位置する園は『選ばれる園』になることが、今後の園の安定運営を考える上で重要なポイントである。
園を選ぶ、ということにおいては、子どもたちよりも、むしろ保護者が占める役割がとても大きいと言える。複数の園へ我が子と共に見学に行き、そこで実際に過ごしている子どもたちの様子を見て、我が子が園で過ごす様子を想像する。

園舎での生活はもちろんだが、園庭で元気に走り回る子どもたちの姿と笑い声は、園を訪れる保護者にとって一番初めに目に入る光景、つまりは園における第一印象となり、のびのびと楽しそうに、そして頼もしく見える光景からは、園の方針や子どもたち同士のかかわりをも想像し、我が子が園で過ごす生活が充実したものになることを容易に想像させるだろう。

今回は、その園庭作りを保護者と協働している、宮城県仙台市にある園の事例を紹介する。
仙台平野の田園地帯と住宅地とのちょうど境目に位置した広い園庭には当初、数本の樹木と、いくつかの遊具があるだけという環境であった。そこで、職員と保護者で手作りの築山を作るなど手を加え、それまで少しずつ子どもたちの過ごす環境を調えてきた。

そんな中、園庭づくりの第二段階として、園舎設計、植栽選定、造園の専門家たちで構成されたKids Jam プロジェクトチームと園とで、コンセプトを決めた園庭づくりがスタートした。

まずはワークショップを4回開き、どんな園庭にしたいのかについてさまざまな意見交換を行い、3回目のワークショップでは、園主催の保護者参加行事『子育てフォーラム』にて、Kids Jamのコンセプト模型を見てもらいながら、この園庭整備プロジェクトについて説明を行い、さらに意見を出し合う、という経緯を経て、園とプロジェクトチームの『私たちの目指す園庭像』を次第に形にしていった。

花壇の植え替えや草むしりなど、力仕事の段階になってから保護者に協力を求めるのではなく、この、プロジェクトの初期段階で情報を共有し、保護者を巻き込んだ動きが、実働の場面での保護者参画の流れをより自然なものにした。

保護者としては、園で何らかの工事を行うということは、日々の我が子の生活にどのような影響が出るのか非常に気になる点であり、外遊びは出来るのか、危険はないのか、行事への影響はどうなのか、費用負担の可能性など、知りたい事柄は少なくない。ついては今回行った初期段階での情報共有は、相互理解を高め心配を払拭できるという点で効果が大きいと思われる。

実際の工事の場面では、園庭に日々増えていく樹木を見て、「この樹は何という名前ですか?」と園児と保護者の双方から聞かれた、と園の先生が話していた。植物が身近にあることで興味を持ち始めたことをきっかけに、畑スペースへのハーブの苗植えは園児と保護者とで行った。また、かつて保護者が手作りしたが老朽化していた築山の土留めを補強し、植栽で縁取りする作業はプロが行うなどし、ここまでみんなで育ててきた園庭にプロの手がさらに加わったことで相互作用がはたらき、『私たちの目指す園庭像』により近づけることが出たプロジェクトであったと思う。

工事終了後、園を訪問し、変化する園庭を目にするたびに、保護者と作り上げる庭が現在進行形であることがうかがえる。そして、いつ行っても子どもたちが全力で遊びを楽しんでいる様子と、お迎えの時間にはそこかしこに保護者が談笑する様子が見られ、日に日にすばらしい空間(空感)が出来上がっていると感じる。

今回の園では元々、保護者とのコミュニケーションの構築や協力体制が出来ている園であったが、園舎の建替えや園庭の改修は、園と保護者とが距離を縮め、もう一歩踏み込んだ関係性を築けるきっかけになり得る。
ただし、保護者の参加は強制ではなく、有志での集まりとすることでハードルを低くし、無理のない範囲で園との関わりを持てるよう、園が配慮を行うことも時には必要かもしれない。

園児のみならず保護者も関わることで、園舎や園庭への愛着が沸き“自分たちの園”という思いが強くなり、保護者も子どもが通う園をさらによい環境へと導くことで、園とかかわる時間の中に充実感を得られるとことと思う。そのことによって、さらに園の良さが伝わり、『選ばれる園』へつながれば嬉しい。

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