土地の良いところを生かす設計
2013年3月竣工の、静岡県富士市にある“認定こども園 みのる幼稚園”。今回は園舎設計のコンセプトの一部をご紹介します。
高低差のある敷地
設計に先立ち、理事長先生の案内で計画地である雑木林に踏み入りました。その林は、高台の住宅地の平坦さが急斜面に変わる寸前の「際(きわ)」に位置し、鬱蒼とした樹木が繁茂し住宅地にいることを忘れてしまうほどでした。そして急斜面の縁に達したとき、木の間から富士市の街並みと太平洋に至る絶景が現れました。また敷地の真ん中付近で人の背丈程の高低差があることに気が付きました。そして何本かの堂々とした樹木の存在が強く印象に残りました。
地形に導かれた設計
地形に沿ってS字形の園舎を大地の縁に配置し、すべての保育室に太平洋を望む眺望を採り入れること、東西に半階ずれたスキップフロアとすること、既存樹木を保存した「森の園庭」をつくること、などの設計の大きな骨格は、この雑木林踏破でおのずと決まったと言っていいのではないでしょうか?それは「地形に導かれて設計した」という感覚です。そして半階ずれた東西のスキップフロアをスロープで結ぶ縦動線と園の要である職員室を円筒型の中央棟に納めると平面図は固まりました。
設計士:松坂 俊一