こどものための認定こども園・幼稚園・保育園

空間の回遊性

限られた空間を豊かな保育空間とするために、空間の回遊性も大切にしています。敷地南側 の保育室と敷地北側の職員コーナー・多目的コーナーは中央の階段のみでなく、外部テラスの緩やかなスロープでもつながり、建物に回遊性を創りだしています。

どの場にいる子どもたちも、2方向以上の空間のつながりを体感できます。エントランス上 部の吹抜けのネット遊具では、子どもたちは飛び跳ねながら2階から2.5階へと移動し、3階の保育室と3.5階の多目的室は、滑り台やクライミングでつながります。また、3階のネットチューブを昇ると、フロアー段差によりうまれた子どもの秘密基地(ロフト)にたどり着きます。

敷地内園庭と敷地外園庭

70坪の土地に60名の園児のための園舎を計画すると、敷地内にいわゆる園庭のスペースは残されていません。ですが、立体的な園庭を考えると子どもたちが外気に触れる場は地上である必要はありません。さくらそう保育園元郷では、0、1歳児保育室はテラスを介して園庭に繋がり、0、1歳児はテラス・園庭で遊びます。2階・3階保育室の園児たちは、日々利用する外部テラスで外気に触れます。そして屋上テラスは、少しだけ空に近い園庭として機能しています。さらに、さくらそう保育園元郷では敷地外園庭として徒歩3分に位置する公園を利用し、秋には近所の畑にサツマイモ掘りに向かいます。保育の場を地域全体として捉えると、 敷地内では室内活動と園庭・外部テラスでの活動、公園ではより活発な運動、そして近所の畑で食育活動を、公民館で発表会と様々な可能性が拡がります。少子化が進む中、大規模施設を新設するだけでなく、保育・教育の場を地域全体だと捉え直すと、新しい豊かな子育て環境がうまれるかもしれません。

実例を一つあげると、北欧では小学校校舎の一部に保育園が計画されることがあります。一般的に小学生は保育園児より早く帰宅するため、放課後には保育園児が小学校の体育館、音楽室、校庭等と施設利用が可能となるのです。地域の施設を利用することを前提とした保育園は、園児にとても豊かな環境を与えています。

この段差を利用した空間の有効利用計画は、「主体的な活動(自由遊び)を中心とする保育により、自発性と思いやりの心を育てる」という保育方針を掲げる園で実現しました。子どもの安全を考慮し、段差をゼロにという思考でなく、子どもたちはそこにある段差から自発的に様々な事を学ぶという考え方で園舎を計画しています。

閉じた保育室で職員が教えるのではなく、園児自らが遊びを発見するという自由な保育理念が、限られた敷地であることを感じさせることなく、豊かで大らかな保育空間を生み出しました。このような狭小地での園舎のあり方が、今後の地域の子育て環境に一つの新たな可能性を提示できると嬉しく思います。

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