• 視察

仕切りのない空間が生む、子どもと大人の新しいつながり

今回の鹿児島見学会では、昨年に引き続きの【すわこども園】さん、【川内すわこども園SECOND】さん、今年4月にOPENした【「tetote」(子育て支援センター、病児保育、放課後児童クラブ、コワーキングスペース)多機能施設】さんの3園を見学しました。
つながりを大切にしている3園ですが、それぞれの園の特色を間近で見ることができ、“ここで過ごす心地よさ”が伝わってくるような見学会となりました。それでは、各園をご紹介いたします。

【幼保連携型認定こども園 すわこども園

建築主 :社会福祉法人諏訪福祉会
定 員 :定員80名(1号9名・2、3号71名)
所在地 :鹿児島県薩摩川内市
構造規模:木造平屋一部2階建
延床面積:935.95㎡
開園年月:2018年3月
第12回キッズデザイン賞 受賞

地域と子どもたちをつなぐ園舎

地域住民や保護者が気軽に訪れ、交流や子育て支援の拠点となることを目指して設計。東側にそびえる丸山のシルエットを模したドーム型の管理棟が象徴的なデザインとなっており、吹き抜けの開放的な空間は子どもたちが自然と交流を深められる工夫がされています。また、正門脇には子育て支援棟「すわママ」を併設し、産前産後のケアを提供するなど、親子が安心して過ごせる場づくりが実現されています。

保育棟を「まんなかホール」を中央に備えることで、遊戯室、みんなのテラス、園庭へとスムーズに繋がる設計となっています。さらに、園庭には季節の井戸や温泉井戸を活用した足湯を設置。自然や水との触れ合いを通じて、子どもたちがさまざまな体験を楽しみながら交流を深めることができる空間が実現しました。

食と遊びがつながる温かな空間

キッチンに隣接する遊戯室兼ランチスペースは、吹き抜けの開放的な設計です。この空間では、子どもたちが料理を提供してくれる人の顔を見ながら食事を楽しむことができます。その中で「誰がどんな気持ちで食事を作ってくれたのか」を自然と学ぶことができ、食育の観点からも大きな意義を持つ場となっています。

見学会の様子

自然豊かな園庭では、運動会の練習が行われていました。子どもたちは元気いっぱいに取り組んでおり、マーチングの練習にも一生懸命です。頑張ってくださいね!

【幼保連携型認定こども園 川内すわこども園SECOND

建築主 :社会福祉法人諏訪福祉会
定 員 :120名(1号35名・2、3号85名)
所在地 :鹿児島県薩摩川内市
構造規模:鉄筋コンクリート造2階建
建築面積:790.20㎡
延床面積:1,524.13㎡
開園年月:2020年4月

「子どもも大人もワクワク、ドキドキ」

川内すわこども園secondでは、「子どもも大人もワクワク、ドキドキ」をコンセプトに、子どもたちの主体性を尊重した保育と、大人がリラックスできる環境づくりを大切にしています。園舎には子どもたちの想像力を刺激する多彩な空間が用意されており、大人と子どもが一緒に成長し、学び合う園生活が展開されています。

A:保育室
B:ランチホール
C:子育て支援ルーム
D:保育Labo
E:BUSHITSU
F:てとてCafé

G:保育スペース
H:アトリエ
I:午睡室
J:吹抜
K:吹抜ネット
L:みんなのデッキ

子どもたちの好奇心を刺激する空間

園舎には、絵本コーナーやプレイルーム、多目的室、木工工房、どろんこ工房、ネット遊具、黒板アートなど、子どもたちが毎日ワクワクしながら遊びつくせる空間がたくさん用意されています。2歳以上のクラスには年齢別の保育室ではなく、間仕切りのない大きな一室空間を家具で緩やかにゾーニングすることで、異年齢の子どもたちが自然と出会い、関わり合える環境を実現しています。

仕切りをなくし開放的に設計されたこの見通しの良い空間では、子ども同士、子どもと大人、大人同士がお互いの存在を意識しながら、「見る・見られる」関係から生まれる、言葉だけでなく非言語的なコミュニケーションを通じて学び合う姿が見られます。

子どもたちの興味が広がるワクワクのプロジェクト活動

川内すわこども園secondでは、子どもたちが興味を持ったテーマを基にした「プロジェクト活動」を展開しています。2歳児から自分の好きなコーナーで遊び始める経験を重ね、3~5歳児ではプロジェクト活動を通じてさらに深い学びと成長を得ています。

プロジェクト活動では子ども同士でサークルミーテイングをおこない、様々な意見を出し合います。最初は上手く喋れなかった子どもも、お友達の意見を見聞きすることで時間経過とともに自分の意見を言えるまでに成長していきます。

子どもたちが主体的に遊べる空間の仕掛けが満載
「積み木の世界プロジェクト」

子どもの数だけアイデアがある!

🐛 生き物プロジェクト ~虫や生き物が大好き!~
虫や生き物に興味津々の子どもたちが、近くの公園へ出かけて虫探しをしたり、発見した生き物について図鑑を作ったりしました。子どもたちの好奇心はさらに広がり、生き物の世界にどんどん夢中に!

👘 ファッションプロジェクト ~オリジナル浴衣作りに挑戦!~
お友達と一緒に相談してオリジナルの浴衣を制作しました。「どんな柄にしよう?」「この色がかわいいね!」と、意見を出し合いながら進めることで、デザインする楽しさや達成感を味わうことができました。

🐟 積み木の世界プロジェクト ~水族館を作ろう!~
積み木を使って、お友達と協力しながら水族館を作るプロジェクト。形を自由に変える事が出来ない積み木で水族館を表現することで、子どもたちの想像力が大きく広がりました!

⛺ キャンププロジェクト ~DEN(隠れ家)で冒険しよう!~
サマーキャンプの経験から、園内のDEN(隠れ家)をテントに見立てて冒険を楽しむプロジェクト。テントの中での遊びやアイデアをどんどん膨らませていきました。その後、テントに見立てていたDENは、ハロウィンシーズンに合わせてお化け屋敷のような空間に大変身!子どもたちは「次はどんな空間にしよう?」とワクワクしながらプロジェクトを続けています。

子どもたちの興味から給食が「異国料理」に変化

2024年のパリオリンピックをきっかけに、子どもたちは国旗やその国の文化に興味を広げ、国旗の模写や調べ学習に夢中になりました。その興味をさらに深めるため、給食職員の提案で韓国、フランス、オーストラリアなど各国の料理を献立に取り入れる工夫も。子どもたちは「今日はどの国の料理かな?」と楽しみながら学びを深めていきました。

さながらcaféミーティングのような和やかな雰囲気の中、帯田園長先生から保育についてのお話を伺いました。

子どもたちが作る「2ndフェスタ」!

川内すわこども園SECONDでは、子どもたちが主体となり、自分たちのアイデアで作り上げる「2ndフェスタ」を毎年開催しています。2024年のテーマはやっぱり「オリンピック」!当日は「聖火の点火」セレモニーからスタートし、「やり投げ」などユニークな競技も登場。子どもたちの自由な発想が詰まった特別な1日になりました。

このフェスタでは、子どもたちが自分たちのアイデアを一から形にする楽しさを存分に味わいます。保育者はその過程を温かく見守りながら、必要に応じてサポート。だからこそ、子どもたちの個性や発想が最大限に生かされたイベントになるのです。

子どもも大人も一緒に成長できる学びの場

川内すわこども園SECONDでは、子どもたちが自由に考え、夢中になって遊べる工夫が随所に感じられました。子どもたちの想像力が保育者にも新たな学びを与え、「子どもも大人もワクワク、ドキドキ」を大切にしている園の魅力が伝わってきました。

【幼保連携型認定こども園 川内すわこども園 tetote】
(子育て支援センター、病児保育、児童クラブ、コワーキングスペース)

建築主 :社会福祉法人諏訪福祉会
所在地 :鹿児島県薩摩川内市

子どもには、大人の心を動かし、人と人をつなぐ力があります

「子ども」がいるだけで、私たちの周りに一体感が生まれます。大人だけのコミュニティに赤ちゃんが加わると、その場が自然とひとつになり、心が温かくなります。どんな大人も、裏表のない子どもと接することで自然と良い面が引き出され、みんなが優しい気持ちになろうとするからです。多機能施設「tetote」は、子どもたちを中心に、大人と地域が共に育ち合うコミュニティづくりを目指しています。

A:保育室
B:ランチホール
C:子育て支援ルーム
D:放課後児童クラブ
E:病児保育室
F:てとてCafe(コワーキングスペース)
G:職員スペース
H:調理室
I:Cooking studio

1階には、クッキングスタジオを併設した子育て支援センターがあり、離乳食教室や料理教室が開催されています。2階には病児保育室があり、保護者が安心して子どもを預けられる環境が整っています。また、事務スペースからは保育室内の様子も確認できる設計です。

交流が広がる「tetote」1階の多彩なスペース

「tetote」の1階には、放課後児童クラブゾーンやカフェ、コワーキングスペースが設けられています。カフェは一日中誰でも利用可能で、地域の憩いの場となっています。また、コワーキングスペースや児童クラブゾーンは、「個人スペース」と「グループスペース」に分かれており、それぞれの目的に合わせて作業や学習ができる環境が整っています。

さらに、児童クラブに併設された「シアタールーム」では、ICTを活用した学習や遊びを楽しむことができます。小学生から大学生、地域のビジネスマンまで幅広い世代が利用し、異年代が自然と交流しながら共に学び合う場としての可能性を広げています。

放課後児童クラブ

こども園と同じ敷地内にあるため、子どもたちや保護者にとっても馴染みのある先生が多く、安心して利用できる環境が整っています。

コワーキングスペース

コワーキングスペースは中高生から地域住民まで利用可能で、園庭を挟んで保育園の様子を眺めながら学習や作業ができます。

子どもたちが安心して過ごせる「第二の家」

小学校が終わると、放課後児童クラブには100名以上の子どもたちが集まります。幼少期から親しんだ幼児施設が「第二の家」として機能し、先生や友達と過ごす安心感の中で、子どもたちがのびのびと楽しむ姿が印象的でした。

子どもたちの笑顔や、迎えに来た保護者の笑顔あふれる様子からは、この場所に温かな地域コミュニティがしっかりと根付いていることを感じました。