平屋の園舎と広い園庭でのびのびと保育をする
内と外があいまいに繋がるデッキスペース。部屋を飛び出して園庭で遊ぼう!
今回の見学会は、【たんぽぽ保育園】さん、【嘉芸こども園】さんの2園を見学しました。各園とも平屋建てで、広々とした園庭があるのが特徴です。子どもたちは保育室から園庭へダイレクトに飛び出し遊ぶことができます。それでは各園さんをご紹介いたします。
【たんぽぽ保育園】
建築主:社会福祉法人共同福祉会
定 員:105名(1号27名・2、3号78名)
所在地:沖縄県沖縄市
構造規模:鉄筋コンクリート造平屋建て
建築面積:917.43㎡
延床面積:838.70㎡
開園年月:2021年4月
1980年に開園し、2023年に43年を迎える歴史ある保育園です。建設地は沖縄県で那覇市の次に大きなまちである沖縄市。沖縄市はエイサーなどの伝統芸能をはじめ、ロックやバスケットボールが盛んなまちとして知られています。そんな沖縄市にあって、建設地周辺は閑静な住宅街で、公園が隣接する自然に恵まれた環境にあります。
各保育室やプレイホールから園庭にすぐに出られるゾーニング
A 保育室
B プレイホール
C 子育て支援室
D 管理スペース
E デッキスペース
「豊かな自然の中でのびのび、いきいきと過ごす」というたんぽぽ保育園さんの保育理念のもと、建物から園庭へすぐに出られるよう、各保育室やプレイホール、子育て支援室をレイアウトしました。
過度に主張しない園舎
建物は、「建物が過度に主張せず、周辺の環境に溶け込むようにしたい」との園さんのご要望をベースに、階高を抑え平屋建てとしました。また、外壁塗装は強い色を避け、コンクリート色を基調としています。
自然豊かな園庭
園庭には、シンボルツリーの大きなガジュマルの木が園児たちを見守るように鎮座しています。園児たちは、木登り、どろんこ遊び、虫取りなど、自然と日々触れ合いながら丈夫な体と心を育んでいます。また、亜熱帯地域に属する沖縄県の強い日差しを避けるために設置した開閉式のタープが、園庭にやさしい影を落とします。
保育園の運営業務のICT(情報通信技術を活用したコミュニケーション)化
たんぽぽ保育園さんでは、保育現場の慢性的な業務多忙をなんとか解消したいとの思いから、保育のICT化を進めており、見学者の皆さまも興味深くお話を聞いていました。
ICT導入後は、入園から卒園までの園児情報の一本化、脱Excel業務による転記や記載漏れの減少、行政への提出書類の作成時間の大幅短縮等々の成果があったそうです。また、将来的には行政とデータを共有し、更なる業務効率化を図りたいとお話されていました。
TIPS 保育のICT化
保育業界の様々な業務を、ICT(情報通信技術)を利用して、業務効率化や生産性向上を図っていくことをさします。書類作成などの事務作業がスピーディーになったり、間違いが起きにくくなったり、保護者との情報共有といったコミュニケーションなどが、迅速に行われたりなどの効果は多岐に渡ります。
アナログとデジタルの融合
たんぽぽ保育園さんでは、園庭を裸足で駆け回り、どろんこまみれになって遊ぶ。豊かな自然に触れ合える保育環境を子どもたちに提供する一方、保育の運営業務のICT化を導入し、業務改善に取り組んでいます。昔ながらの良いものと先鋭的なものの両面を合わせ持っている園さんだと感じました。
【嘉芸こども園】
建築主:社会福祉法人金武福祉会
定 員:141名(1号27名・2、3号114名)
所在地:沖縄県国頭郡金武町
構造規模:鉄筋コンクリート造平屋建て
建築面積:1,336.10㎡
延床面積:1,240,20㎡
開園年月:2023年4月
建設地は沖縄県本島のほぼ中央に位置する金武町。大自然とアメリカ文化が混在するまちです。嘉芸こども園さんは、町からの民営化にともない、2021年に公私連携幼保連携型認定こども園として創設されました。民営化以前の建物は海抜の低い場所にありましたが、民営化後は、津波による被災を受けないよう小高い丘の上に移転建替されました。園庭や屋上からは太平洋に繋がる金武湾を眺望することができます。
TIPS 公私連携幼保連携型認定こども園とは
市町村と法人が、認定こども園法に基づく協定により、締結し、設立されたこども園のことを言います。様々な連携の下に、民営でありながら、市が一定の関わりを持つ運営形態です。法人は、市町村から様々な支援を得ることができるメリットがあり、市町村は、財源負担を軽減できたり、安定してこども園を継続運営が見込めるメリットがあります。
園庭に面した表のデッキスペースと建物裏のデッキスペース
A 保育室
B プレイホール
C 絵本コーナー
D 管理スペース
E デッキスペース
各保育室やプレイホールから園庭に出られるよう部屋の配置計画をしました。5900㎡ほどの敷地には広い園庭があり、子どもたちが元気いっぱいに遊び、走りまわっています。また、建物の南東に面した園庭側デッキスペースのほか、北側と西側にもデッキスペース(光庭)を点在して配置し、建物全体に明るさと開放感をもたらせます。
深い庇と花ブロック
建物は、沖縄特有の夏の暑さ対策として、デッキの上部に軒の深い庇を設けています。沖縄では雨端(アマハジ)といいます。雨端は日差しや急な大雨(スコール)が室内に侵入するのを遮り、影をつくって涼しさを保ちます。また、玄関アプローチ周辺には花ブロックのパーテーションで適度な影を作りながら、風と光を取り込む工夫をしました。
部屋は高い天井でひろびろと
保育室の天井は最高4.65mの片流れ天井となっており、ハイサイドから自然の風を取り込むよう意識しました。玄関に入るとランチルームやプレイホールが連続して配置しており、広々とした明るい空間となっています。
保護者のミーティングスペース
事務所に隣接して保育者のフリースペースを設けており、ノンコンタクトタイムを確保するスペースとして活用しています。室内の壁や天井の柄、什器はカフェのような雰囲気です。また、対面式のキッチンカウンターが併設されており、コーヒー等を飲みながらリフレッシュしたり、保育者同士のコミュニケーションを図ります。少人数でのミーティングや制作物の準備等もできます。
TIPS ノンコンタクトタイム(NCT)
保育現場において勤務時間内に発生する休憩時間とは別に、物理的に子どもたちと離れ、各種業務を行うことができる場所や時間のことをさします。
地域との共生
理事長先生は県外のご出身で、金武町へ移住されてから嘉芸こども園を創設されました。金武町は太平洋に面しており、豊富な水資源を活かした稲作や田芋の栽培が盛んな自然豊かなまちです。一方で面積の6割を米軍基地が占めており、国際色豊かなところも特徴です。理事長先生からは、「基地関係の外国人の方々が、引越しの際の力仕事や英会話の講師などを積極的に手伝ってくれる。」「近隣の小学校で行事がある際は、園の駐車場を解放することもあるんですよ。」とのお話があり、園さんと地域が上手く共生されてるのが印象的でした。