遊び心と温かさをちりばめながら愛育
今回の見学会は、【きらきらこども園Ageda】さん、【愛の星familiar】さん、【きらきらこども園】さんの3園を見学しました。各園ともに成長に合った遊びとコミュニケーションの中で形にとらわれず、のびのびと遊べる空間が広がっています。また、保育士同士でより良い環境を作り上げている点も特徴の一つです。それでは各園さんをご紹介いたします。
【きらきらこども園Ageda】
建築主 :社会福祉わらべ福祉会
定 員 :105名
所在地 :沖縄県沖縄市
構造規模:鉄筋コンクリート造2階建て
建築面積:510.62㎡
延床面積:852.37㎡
開園年月:2019年4月
玄関をあえて設けない ・・・ 土足で園庭まで通抜けが可能
『形にとらわれず、子どもの好奇心を大切に』というきらきらこども園Agedaさんの保育方針のもと、『あそぶ場』を意識し、各所に『自由に走り回れる場』を散りばめました。
広々とした中庭へ土足で駆け抜ける
通り抜けが可能な計画となっています。また、トップライトのある半屋外デッキスペースは、雨天時においても明るく風通しが良いため、ランチルームと一体的な利用をすることで、様々な形で利用可能。
吹抜けを中央に設けることで、2階デッキとの連続性を確保し、将来ネット遊具も設置可能な計画としており、天気の変化を肌で感じながら遊べる空間となっています。
園児も・保護者も・職員も・・・ ゆったり、くつろげる、スペースを
玄関ポーチ(ピロティ)では、保護者と保育士が相談するスペースとして利用したり、また、中庭デッキでは、保育士が休憩スペースとして、ゆっくりくつろぐ様子は、建物を上手に利用していると感心させられます。
2階デッキスペースは、夏場のプール利用時を除いては、開閉式デッキで蓋をすることで、園児が自由に走り回れるスペースとして利用可能な計画としている。急な雨でも気にすることなく遊べる中庭デッキは、園児達が遊んでる様子ものびのびしているように感じられます。
見学会の様子
【愛の星familiar / 企業主導型保育所】
建築主 :社会福祉法人わらべ福祉会
定 員 :19名
所在地 :沖縄県沖縄市
構造規模:鉄筋コンクリート造2階建て
建築面積:180.49㎡
延床面積:282.13㎡
開園年月:2022年12月
建設地は、きらきらこども園Agedaさんの建物に隣接して建てられました。
駐車場は隣接するAgedaと共用利用が可能とする計画とするため、車路スペースを回避する形で建物の輪郭が決まり、それに合わせてボリュームも目一杯に確保する計画としています。
狭いスペースの中でも、開放的な印象を少しでも感じられるよう配慮してプランを進めていきました。1階保育室は、引戸で一体利用可能な計画とすることで、空間の広がりを確保する計画としています。また、2階保育室は南北ベランダに面することで、より開放的な空間が広がるような計画としています。ベランダ屋根は一部ルーバーを設けたり、吹抜けを設けることで、圧迫感を和らげる効果もプラスしています。
園児用のトイレは、保育室の採光を優先して計画されるため、保育室脇に押しやられて設計されることが多く、一般的に暗くなりがちです。しかし、この建物では、沐浴室・園児用トイレの天井は、トップライトを設けることで、明るく開放的な空間となるよう計画しています。ふとした瞬間に、青空に浮かぶ雲を見ながらおしっこするのは、なかなか経験することはないかと思います。
小さいながらも、1階に病後児保育室、2階に体調不良児室と一時預り室を設けており、保護者からのニーズに対応するよう計画しています。
同法人でこの施設を含めて4カ園を運営されており、規模的にも大きくなり、保護者及び学生や保育士からも人気の園さん。職員が産休明けでも職場復帰しやすい環境づくりも、法人としての職場環境への考え方が見て取れると思います。
小さいながらも開放的な空間
トップライト・ルーバーで明るい空間
【きらきらこども園】
建築主 :社会福祉法人わらべ福祉会
定 員 :95名
所在地 :沖縄県沖縄市
構造規模:鉄筋コンクリート造3階建て
建築面積:432.04㎡
延床面積:1504.80㎡
開園年月:2023年4月
建設地は、当初、市の西端に所在していたが、建物の老朽化に伴い、同敷地での建替えが難しく、移転先選定に数年を要する中、市の東端に敷地を確保することで、移転建替の計画がようやく進行しました。
住宅街の中での移転のため、駐車場を可能な限り確保しつつ、通り抜けが可能な計画とすることで、近隣の交通渋滞を極力配慮する計画としている。また、3階部分をセットバックさせ、壁面をランダムに大きくくり抜くことで、周囲に圧迫感を与えないような立面計画としている。
3階建ての1、2階をこども園。3階に学童等を配置する計画としています。
2階デッキスペースは、保育室の床とは段差がなく、かつ、雨樋等の突出物を出さないような計画とすることで、園児が安全で自由に走り回れるスペースとなっている。
沖縄で園舎設計をする際に、日影・日除け、雨除けの問題が必ず出で来る課題である。
軒の深いベランダを計画することで解決するが、そうする事で逆に保育室が暗くなりすぎる場合もある。その辺のバランスを考慮し、ベランダ上部へスリットを入れ、ルーバーを設ける等計画している。
夕方の開口部から漏れる灯かりにも変化をつけて
玄関ホールは木のルーバーと、イベント毎の楽しいイラストでお出迎え
トップライトのある吹抜けを中心に、笑声や視線、動線がつながる
トップライトのある中央ホールは、吹抜けを通して様々な部屋とつながりあう。
人の動線はもちろん、調理室~ランチルーム~園庭へと繋がるのびやかなスペースは、空間を通して美味しい匂いも届ける。園児が楽しく食事をしたり、笑い声のある空間はそれだけで空間を豊かにしてくれる。そして、各所に飾られている植物も、職員が気分で飾り付けをしているとのこと。ちょっとした緑でも、至る所に散りばめられていると、より自然を身近に感じさせてくれます。
職員休憩スペースの確保も重要な要素
子育て支援室は、外部からも土足で楽々アクセス可能な計画としていて、空いた時間は職員の休憩スペース(ノンコンタクトスペース)としての活用も兼ねている。水盤越しにカフェ気分で気分転換でき、ゆっくりくつろげる場所として利用されている様子。
見学会の様子
質問コーナー
子どもたちのために、園のために何ができるのか。それぞれの園が抱える悩み、疑問を解消すべく園長への質問コーナーを設けました。
建物の遊び心は優先順位を設けていますか。
特に優先順位は設けておりません。何が面白いかは、一つの大きな箱からイメージを膨らませていきました。例えば、普通の倉庫をロフトにする。倉庫の奥には小さな扉を。
園を建てる際の職員とのイメージ共有は行っていたのですか。
職員の意見を重視することを心がけていたため、オープンに話を広げていきました。
植栽をちりばめて配置しているのですが、当初から装飾イメージを持ってプランを行っていたのですか。
装飾は、職員に任せ好きなように飾り付けをしています。