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広島市街地の保育園でも、自然を駆け巡るような体験を

今回の見学会は、【さくらの杜SKY保育園】さん、【アザレアキッズステーション】さんの2園を見学しました。各園とも、こどもたちが自然を身近に感じることができる園舎のつくりが特徴です。それでは各園さんをご紹介いたします。

【さくらの杜SKY保育園】

建築主 :株式会社桜の杜
定 員 :45名(2・3号)
所在地 :広島県広島市
構造規模:鉄筋コンクリート造3階建
建築面積:406.05㎡
延床面積:603.61㎡
園庭面積:299.35㎡(中庭・人工芝)
開園年月:2023年4月

広島市中心部から宮島エリアを結ぶ、宮島街道のほぼ真ん中に位置し、高架道路の節点となる交差点部の非常に人通りの多い場所にあるさくらの杜ひより保育園(小規模保育事業所)が認可保育所へ移行するにあたり、3歳児から5歳児の園児たちの新たな園舎(分園)を建てました。

市街地の限られた敷地にある保育園でも、自然の中を駆け巡るような体験を日常にできないか…
定期的に自然活動を取り入れている園だからこその思いを形にしています。

TIPS 認可保育所とは
厚生労働省が定めた「児童福祉施設最低基準」を満たした施設、かつ、都道府県知事や市区町村長から認可を受けた保育施設になります。「認可保育所」以外にも様々な保育施設があります。

「保育所の設置認可等について」厚生労働省WEBサイト
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/hoiku01/

「保育所1・2・3」厚生労働省WEBサイト
https://www.mhlw.go.jp/hoikusyo123/donna/index.html

曲線を描く有機的な構造と階層を活かした設計

園舎は所々に自然の杜を感じられるような仕掛けが散りばめられています。建物全体が緩やかな曲線を描く有機的な構造となっており、限られた敷地の中でこども達のステージを大きく獲得するために床を立体交差させています。

3階テラスを支えるRC柱は頂部で葉が拡がるような形状を持ち、同一柱から2階テラスを支える枝柱が分かれる形状は植物をモチーフとした構造になっています。

2~3階は曲面の階段や滑り台で回遊性を持たせ、より広い活動が可能です。

また、2階のウッドデッキでは夏にプールができる他、人工芝部分の広場より段差をつけて高く設計しているため、こども達の発表会の場としても使用できます。

3階テラスには屋上庭園があり、シンボルツリーとなる桜の木をはじめ、こども達と共に成長していく樹木が植樹されています。また、地上に設けた中庭では土に触れることができ、広い砂場で遊びながら上層階の友達とおしゃべりすることもできます。

空へ向かって動き回れる園舎

内部空間も木を基調とした空間です。1階図書コーナーには、高いヒノキの生木が設置され、自然界の生命力を身近に感じることができる空間となっています。
また、2~3階円柱状の内部階段の踊り場では、こども達がちょっと立ち寄れるDENスペースを設置するなど、屋内~屋外へと緩やかな曲線でつながる空間から空へ向かって力いっぱい動き回れる園舎としました。

都市空間を切り拓き、もりを育むようにこども達のパワーを自然と伸ばしていく土壌となる園舎で、「さくら」と一緒に成長し、「もり“杜”」と「空“SKY”」を身近に感じることができます。

見学会参加者のコメント

また、デッキと屋上園庭に段差があることで、舞台小物が映えるステージのようでもあった。

屋上ですくすく育っている樹木は、こども達の観察広場となっており、季節毎の自然を感じられる。
各階、屋内と屋外がゆるやかにつながり、実際以上の広さを感じる、豊かな園舎だなあと感じた。

屋上園庭を2階と3階に積層する様に設けることで、街中に居ながらもこども達は広い空間を遊び回っていた。
避難用すべり台も活用して、設計意図どおり立体的に隅々までこどもの遊び場となっており、のびのび遊びまわるこども達の様子が印象的だった。

2階の保育室から続くデッキは、半屋外的な使い方がされており、机や遊び道具が並べられた保育室の延長空間のような贅沢なスペースとなっていた。

【アザレアキッズステーション】

建築主 :学校法人村田学園
定 員 :120名(竣工時)
所在地 :広島県東広島市
構造規模:木造2階建
建築面積:864.71㎡
延床面積:924.36㎡
開園年月:2016年3月

アザレアキッズステーションは、幼保連携型認定こども園として、2016年に開設しました。「こどもに『本物』を体験してもらいたい。『本物』の自然と触れ合ってほしい」という保育方針のもと、隣接した山を生かした自然と遊ぶことのできる園舎を意識して園舎づくりが進められました。木を使った園舎は、森の中に建つ別荘のような建物をイメージしました。

内装にも木材を多用して、木の香りとぬくもりに包まれた、家庭的で癒される空間を目指しました。また、「こども一人ひとりの個性を尊重したい」との考えから、それぞれの保育室の屋根の形や色を変え、あえて「違い」を設けましたが、広い廊下やバルコニーといった、各保育室をつなぐ「間」の空間を重視しています。

見学会参加者のコメント

裏山の斜面も遊び場としてうまく活用され、こども達もとても楽しそう。ポリシーを持った素敵な先生方のお話もたくさん聞かせて頂き、とても勉強になりました。
私のこどももこんな園でのびのび育てたいなと感じました。

緑ゆたかなわくわくするアプローチをぬけ、暖炉の置かれた玄関をぬけると、裏山へつながる中庭が広がっていました。
中庭をぐるっと囲む開放的な廊下を、こども達は元気にあそびまわっていました。
自然素材の園舎に先生方がつくられた木製のアイテムがとてもなじみ、園舎全体から温かい雰囲気がにじみ出ていて素敵な雰囲気でした。