ノンコンタクトタイムを実現する川内すわこども園SECOND
仕切りがないことで、交流が自然と繋がっていき、園舎が1つの空間となる
今回の見学会は、管理スペースの工夫でノンコンタクトタイムを実現している【川内すわこども園SECOND】さんと、【SUWAこども園】さんの2園を見学しました。保育園等の管理スペースは主に事務室、職員室、園長室、職員休憩室などがあり、各々独立した部屋となっていることが多いのですが【川内すわこども園SECOND】さんでは、扉を設けず1つのつながりのあるスペースとして設けています。【SUWAこども園】さんにおいては、つながりのあるスペースとして、保育棟に「まんなかホール」を中央に備えることで、交流が自然に発生しています。それでは各園さんを紹介いたします。
【川内すわこども園SECOND】
建築主:社会福祉法人諏訪福祉会
定 員:120名(1号35名・2、3号85名)
所在地:鹿児島県薩摩川内市
構造規模:鉄筋コンクリート造2階建
建築面積:790.20㎡
延床面積:1,524.13㎡
開園年月:2020年4月
2018年鹿児島県薩摩川内市の待機児童解消のため、2020年4月に開園した川内すわこども園SECOND。建設地は静かな住宅地でした。近隣に配慮しつつ建物の内部・外部が、開放的で繫がりのある空間をもつ幼保連携型認定こども園です。
ノンコンタクトタイム(NCT)
保育現場において勤務時間内に発生する休憩時間とは別に、物理的に子どもたちと離れ、各種業務を行うことができる場所や時間のことをさします。
保育環境改善等事業
令和5年度、531億円の概算予算を要求している事業にノンコンタクトタイムを確保し、保育士同士で保育の振り返り等を実施するためのスペース等の設置に必要となる改修費用等が補助対象となっています。
https://www.mhlw.go.jp/jigyo_shiwake/dl/r01_jigyou02a_day1.pdf
保育スペースと管理・休憩スペースを明確にゾーニング
A:保育室 B:ランチホール C:子育て支援ルーム D:保育Labo E:BUSHITSU F:てとてCafé
G:保育スペース H:アトリエ I:午睡室 J:吹抜 K:吹抜ネット L:みんなのデッキ
1F:保育Labo(事務職員スペース)
自席を決めないフリーアクセススペースとなっています。もちろん園長先生の席も決まっていません。個人の書類教材等は移動式キャビネットに収め、キャビネットを移勤して、空いている席で業務を進めています。座る席によって、目に入る景色や先生たちの顔ぶれが違うため、新鮮な気持らで仕事に取り組むことができています。
1F:BUSHITSU(部室)
保育者の作業スペースを設けており、各種保育記録の作成、教材の準備や製作、少人数でのミーティング、保育の振り返りなどに使用しています。扉はないが半個室となっており、管理スペースの中でも集中して仕事に取り組むことができるつくりとしています。
2F:保育Labo(職員作業スペース)
2階の2~5歳の保育スペースにも扉を設けていません。一つのつながりあるスペースとし、異年齢間の交流が自然とおこなわれています。その中央にも1階同様フリーアクセススペースの「保育Labo」を設け、保育者が各種保育記録の作成や制作物の準備ができるスペースを確保しています。
異年齢保育とは
縦割り保育とも呼ばれます。一般的には、年齢ごとにクラスわけを行う「年齢別保育」とは異なり、異なる年齢の園児たちが関わることで、年上は年下に教えたり世話をしたり、年下は、お世話をしてくれる年上を頼ったり、憧れたりと、実社会と同様に、異なる年齢差でのコミュニケーションが人間的成長につながると考えられている教育法と言われています。また、異年齢保育の中にも、イエナプラン教育法、モンテッソーリ教育法など多岐にわたります。
1F:tetote café(リソーススペース)
基本的には保育者のスペースですが、来園者への対応、保護者との談話スペースも兼ねています。また、お迎えの時間に保護者が帰宅前にコーヒー片手にほっと一息ついたり、保護者同士の交流スペースとしても利用できるように柔軟に使用しています。Café部分は玄関玄圏のすぐ脇に配置し、保護者が気軽に利用できるような設計としています。
川内すわこども園SECONDさんでは、勤務中の保育者の中で、ノンコンタクトタイムとして「記録の日」を設定し、事務作業や行事の準備など集中的に行える勤務体制の取り組みを始めています。
残業量が減り、心に余裕ができることで、日々の保育をより良いものにするための取り組みとなっているとのことでした。
見学会の様子
まとめ
ノンコンタクトタイムの確保は、子どもたちと直接かかわるコンタクトタイムをより充実したものにするためにも重要であり、さらには保育者同士の連携や安全な保育を行うためには必要不可欠な取りくみとと言っても過言ではありません。
【SUWAこども園】
建築主 社会福祉法人諏訪福祉会
定員80名(1号9名・2、3号71名)
所在地 鹿児島県薩摩川内市
構造規模 木造平屋一部2階建
延床面積 935.95㎡
竣工年月 2018年3月
山間部から平野部の温泉地に移転したSUWAこども園。建設地は温泉水を冷却し販売していた工場跡地です。近隣の山は「丸山」と呼ばれ、そのシルエットを模したドーム型の管理棟が印象的な外観です。正門脇に、子育て支援棟「すわママ」を併設し、産前産後のケアを行っており、保育棟は「まんなかホール」を中央に備え、各保育室と繋がっているレイアウトとなります。
連続する山型梁が交流の場をつないでいます
季節の井戸と温泉井戸を活用し、じゃぶじゃぶ池と憩いの足湯を設け、五感で体感する場になっています。
保育棟は「まんなかホール」を中央に備えることで、子どもたちの交流が自然に発生し、遊戯室・みんなのテラス・園庭まで交流の縦軸が繋がっていくようになっています。
自然とふれあい、五感で体感し、身体的・精神的な成長を促す
じゃぶじゃぶ池では、水に触れ、動物や植物を見つけ、観察したりできます。
憩いの足湯では、水の流れる音を間きながら絵本を鑑賞するなど、子どもたちが五感で体感できる場所となっています。憩いの足湯は、保護者や地域住民の方に開放しており、園庭を見ながら皆で、ひと息付ける場所にもなっており、地域に根づく子育て施設となっています。
【SUWAこども園】さんでは、子育て支援として、園長先生がインド中央政府公認のヨーガの資格をお持ちという事や、職員さんの中でもピラティスをされている方がいらっしゃったので、子育て支援スペース「すわママ」で、ヨーガやピラティスも月3回ほど実施しているとのこと。また、助産師さんの相談会なども月2回ほど開催しているそうです。告知後10分ほどで予約が埋まってしまうほど人気だとのことです。
見学会の様子
まとめ
【川内すわこども園SECOND】さんは、扉を設けないという管理スペースの工夫でノンコンタクトタイムを実現し、【SUWAこども園】さんは、各保育室と繋がる「まんなかホール」により、交流を自然に発生させていました。
どちらにもつながりのあるスペースが工夫の一つとなっていました。
【照明保育園】
建物概要
構造:木造平屋建
敷地面積:3,619.50㎡
延べ床面積:693.17㎡
既存建物は高崎正治氏(崎の正式表記は「たつさき」)による設計の「建物そのものがインスピレーションである」という発想でデザインされた木造園舎。
コンセプト
高崎正治氏(崎の正式表記は「たつさき」)による設計の特徴あるデザイン、パワフルな既存園舎を中心に子どもたちを包み込むような建物の配置としています。道路からのファサードは開口を最小とし、内部が容易に見えないよう工夫しています。トンネルをくぐると子どもたちの世界、遊びばがひろがります。内部が見えないことで子どもたちの世界の広がりを強調しています。園舎と園庭をつなぐ中間領域 (半屋外)から既存園舎へと渡り廊下が2本伸びていています。屋根、柱、デッキ床があることで園庭内に変化をもたらし、子どもたちの世界(遊び)が変わります。
正門
渡り廊下
トンネルから保育室へのアプローチ
子どもたちの世界へと、結界のような役割を担う正門
トンネルはスロープとなっている。右手には、事務室。左手に子育て支援。保育室へつづくアプローチがあります。
1歳保育室
保育室の一角を段下がりのスペースとし、コーナー保育で活用できるよう計画した。
3歳保育室+多目的室(たたみ保育室)
大黒柱がある園舎中央の保育室2室はハイサイド窓で外光を確保した。畳の部屋は午睡室として活用している。2室つなげて活用できるよう、大型の木製建具で仕切っている。
子育て支援スペース
玄関近くに設けることで利用しやすい配置としている。和室を二間設け、休憩など一息つけるスペースとして活用している。
事務室と土間
コンパクトな事務スペースは壁面を全て書類収納としている。土間スペースで靴を脱がずに来客対応できる。
トイレ
曲線を多用し、柔らかく明るいトイレとした。
図書コーナー
廊下の一部に省スペースではあるが図書コーナーを設けた。おすすめ絵本が並ぶ。
プール
デッキ下に常設のプールを設置。パーゴラで日陰を作りだしている。隣接して外部シャワー、外部トイレも設置している。