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【対談】こどもの「夢」を育む美しい園舎を求めて1

対談者紹介

株式会社JSD 代表 徐光氏
 1995年に構造設計事務所(株)ジェーエスディーを設立し、代表に就任
株式会社時設計 代表取締役 菊地宏行氏

「もっと自由に、もっと創造的に」―園舎設計の概念を覆した徐氏の言葉

菊地宏行(以下、菊地) 園舎設計とは、大きく分けて「意匠」、「構造」、「設備」という3つの専門技術者が協働し、一緒につくりあげていくものです。その構造の世界が、徐さんと出会って一変しました。徐さんとの最初のプロジェクトで、提示された構造模型を見たときの衝撃は、今でも忘れられません。多くの受賞歴のある構造界の第一人者との協働によって開ける新しい世界を目の当たりにした瞬間でした。あれから何年になりますか。

徐光(以下、徐) 6年くらいでしょう。

菊地 あの日から、我々のデザインや設計の考え方がガラリと変わりました。幼稚園の園舎は、ひとつの保育室が4間×4間(1間1.82m)の16坪、すなわち約53㎡という広さが、文部科学省の一般的な基準になっています。構造計算もそれに準じますし、もちろん我々も、それを基準としてずっと設計してきました。

 この基準は、木造建築時代からの流れなんですよね。

菊地 ところが徐さんは、「構造空間は、もっと自由で創造性溢れる世界ですよ」とおっしゃった。柱と柱の間のことを「スパン」といいますが、経済性の高い「経済スパン」によるグリッド※1を、無意識に下敷きにしてきた我々に、「構造デザインの自由と経済性は両立できること」を示していただいたのです。それまでの固定概念が見事に覆されました。

 「経済スパン」が適した建物はたくさんあります。しかし園舎設計は、その呪縛から解放されるべきであり、もっと自由であっていいと感じました。「経済スパン」から離れても、経済的、効率的、長寿命で快適な園舎をつくる方法はありますからね。

「コンセプト」と「機能」を重視し、園舎それぞれの可能性を拓く

菊地 徐さんは、構造デザインはもちろん、施工、材料、専門業者、さらにコストまで熟知している。だから我々のイメージをすぐに理解し、共有して、その世界をさらに高めてくれます。だから、ここJSDで行われる意匠と構造の最初の打ち合わせが、その後のデザインを決定づける重要な場となると所員も意気込んで乗り込んでいきます。その場でスケッチが始まり、手計算での検証が行われる。まさに園舎の「骨格」ができあがっていくわけですね。

 私は、「計算して終わり」と思っている人は、構造設計者とは言えないと考えています。計算の効率を優先するあまりに、先ほどの話ではありませんが「経済スパン」ありきになったり、スケールアウト※2したり、使い勝手がよくない建物は、つくりたくない。大事なのは、「どんなコンセプトの空間」なのか。そして、「どんな機能が求められているか」なのです。そしてそのコンセプトを実現するために、どんな構造が必要か、素材をどうするか、光や風をどうするか、などを総合的に考えていくプロセスです。構造を議論するのではなく、空間を議論しながらつくっていきたい。
時設計さんと一緒に取り組む園舎づくりは、いつも初期の段階から関わらせていただけるので、一園一園がいろいろな可能性に溢れていて、本当に楽しいです。

※1グリッド:建築物の設計の際に利用する、等間隔に直交する基準線で、一定間隔の格子のこと。
※2スケールアウト:本来のスケール感から乖離してしまうこと。

【対談】こどもの「夢」を育む美しい園舎を求めて2に続く

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