子どもを真ん中に据えた“園づくりの本質”を探る一日
CHAIN第8回は「子ども建築 勉強会」として、時設計で開催いたしました。
少子化がさらに進む今、これからの幼稚園・保育園づくりに携わる皆さまとともに、教育・建築・経営の3つの視点から「園の未来」を見つめ直す時間となりました。
当日は、コンサルティング会社S・Yワークス様による講演をはじめ、「子どもと哲学」「木造でつくる園舎」など、多角的なテーマでの発表を実施。会場では活発な意見交換が行われ、参加者の皆さまからも「今後の園づくりのヒントになった」という声をいただきました。
以下では、当日の各セッションをダイジェストでご紹介します。
第8回「子ども建築 勉強会」実施レポート
Children’s Architecture Workshop Report

【Session 1】幼保フラット化から見えてきた『本義の時代』
自園の価値をどうアップデートするか?
(講師:S・Yワークス 取締役 篠田大輔 氏)
少子化が進み、保護者が「幼稚園・保育園・認定こども園」を横断して選ぶ“幼保フラット化”の時代。
距離や料金といった“合理的価値”だけでは選ばれなくなりつつあり、篠田氏は「非合理的に選ばれる園」の条件をデータとともに示しました。

POINT
- 合理性を越えてでも「ここに通わせたい」と思われる園には共通点がある
- それは、先生の質・保護者コミュニティの雰囲気・園の掲げる“旗”への共感
- 園の“空気感”はマニュアルでは作れず、
「子どものために」が軸になっているかどうかが分岐点 - 「合理的価値の比較に巻き込まれるか、それを超える価値を育てるか」。
【Session 2】これからの園に必要な “ファンを創造する力”
(講師:S・Yワークス チームリーダー 堀 春菜 氏)
堀氏からは、園の現場力を高めるための「ファンづくり」に関する講演が行われました。
■ 少子化と園選びの変化
出生数が過去最少となった現状をふまえ、園の独自価値をどう高めるかが生き残りの鍵であると解説。
■ 園が選ばれる理由とは
- 園のブランドは、先生の姿(言行一致)から生まれる
- 期待価値<体験価値の積み上げが、保護者のファン化を生む
■ 質の高い“先生”とは?
「ファンを創造する力」を細かく要素分解し、美意識・自園理解・気遣い力・伝える力・課題解決力など実践につながる具体的な指標が紹介されました。
園見学のチェックリストも共有され、参加園の多くが「すぐ現場で使える」とメモを取る姿が印象的でした。

【Session 3】こどもと哲学 — 思考力が育つ園づくりとは?
(時設計・椎名)
時設計・椎名からは、近年注目されている「こどものための哲学(P4C)」について紹介をいたしました。
なぜ、こどもと哲学か

ワークショップでの様⼦。
みんなで円を作り話し合い、コンセプトを決めてものづくりに取り掛かかっていた。
まずは単純に、思考⼒は中々⾝につくものではないこと。
知識が新たな知識を欲する時、動⼒となる思考⼒は⻑年の蓄積によって得られる。
ならば、こどもの頃から多⾓的な⽬線で疑問を⾒つけられる観点を養うことができたらいいのではないか。
そんな中、ワークショップを通してこどもたちと触れ合う機会ができた。
年⻑のみだったが、⼀つの物をみんなで作る事に対して先⽣
主導のもとそれぞれ意⾒を出し、まとめ、決定に⾄る⼯程を
みて、こどもたちの会話はとても哲学と近しいと感じた。※紹介スライドより
■ 哲学は「知恵を愛する」こと
哲学は難しい学問ではなく、身近な疑問を問い合う営みそのものであると説明。
■ なぜ今、子どもに哲学か
変化が激しい現代において、思考力は生き抜くための大切な力。
ワークショップでの実体験から、「子ども同士の対話はすでに哲学的である」と語られました。
■ 哲学対話のルール
- 否定しない
- 全員が対等である
- “ざわざわ時間”を止めない(思考をまとめる大切な時間)
■ 実践例の効果
- 対話時間が20分→40分へ
- 発言が均等化される
- 子ども同士が「相手の話を聞く」姿勢に変化
「ともに考える」経験を幼児期から積むことが、これからの教育の大きなヒントになると感じられる内容となりました。
【Session 4】木造でつくる園舎の魅力
五感を育む環境デザインについて
(時設計・板澤)
最後は時設計・板澤より、木造建築が子どもの育ちに与える効果について発表しました。

■ 園舎は「第2の家」である
幼児期の一日の半分を過ごす場所だからこそ、五感を健やかに育てる環境づくりが重要。

■ 木と五感の関係
特に視覚・嗅覚・触覚において、木材が人に与えるポジティブな影響は科学的にも実証。

■ 木の建築文化にふれる体験
木造園舎は、日本の伝統技術と現代のデザインが融合した空間として、子どもの感性を育む貴重な体験になると紹介。

■ 木造のメリット
- 保育環境としての良さ
- 工期・補助金・融資面でのメリット
- 県産材活用など地域性も反映できる
全国の木造園舎の事例も多数紹介され、木質空間が持つ柔らかい光・音・匂いが、子どもたちの安心感や集中力を引き出す様子が写真からも伝わります。
まとめ
今回の友の会では、
「子どもの育ち」×「先生の質」×「環境デザイン」×「園経営」
という、園づくりの根幹を成すテーマを多角的に学ぶ時間となりました。
園の未来を考えるうえで、「教育・空気感・建築環境」のすべてが“子どもにとって本当に良いものか”を問い、それを自園らしく形にしていくことの重要性が、各セッションを通して改めて浮かび上がりました。
今後もTHINKでは、学びと実践をつなぐ場として、園づくりに役立つ情報を発信していきます。



