• 視察

自然、アートを通して豊かな感性を育む北欧建築

今回の見学会は、デンマークのコペンハーゲンにある【フォーファッターフーセット幼稚園】さん、カルチャーセンター【クー・べ】、【バーネクルチュアフス・アマ―】、老人ホーム・ケアセンター【リンデハーフェン・プライヤセンター】、【プライヤセンター・スュルンド】の5施設を見学しました。自然との共生、アートなど北欧文化溢れる素敵な施設をご紹介いたします。

フォーファッターフーセット幼稚園
forfatterhuset kindergarten

定 員 :170名/職員40名
所在地 :デンマーク、コペンハーゲン
建築面積:約1,600㎡
開園年月:2014年

高齢者と子どもを結ぶレンガの幼稚園

フォーファッターフーセット幼稚園は、高齢者コミュニティの中に位置し、多世代が共に暮らす街づくりを目指して2014年に建設されました。賑やかなノレブロ地区の周辺環境に調和するよう、ファサードには細いレンガのスリットが採用され、街並みに溶け込むデザインとなっています。

子どもの感性を育むアート空間


1階のプレイルームへ向かう通路にはアート作品が飾られており、小さいころから自然な形でアートに触れながらものを見る力や豊かな感性を育むことができます。また、『幸福度』という観点からも、アートを通じて心の栄養を蓄え、小さな幸福感に気づける場となっています。

さらに、アトリエスペースでは幼児が制作した作品を発表するプレゼンテーションが行われており、子どもたちが自分の表現を共有し、他者とつながる経験を得られる場となっています。

屋根が絵本で出来ている「えほんの家」

鉢植え」をモチーフにした屋上テラス

各階に「鉢植え」をモチーフにした屋上テラス(庭)が設けられ、庭と建物が一体となった立体的なデザインが特徴です。この設計により、身近に自然とのつながりを感じられる空間が生まれています。

園児も・保護者も・職員も・・・ ゆったり、くつろげる、スペースを

玄関ポーチ(ピロティ)では、保護者と保育士が相談するスペースとして利用したり、また、中庭デッキでは、保育士が休憩スペースとして、ゆっくりくつろぐ様子は、建物を上手に利用していると感心させられます。
2階デッキスペースは、夏場のプール利用時を除いては、開閉式デッキで蓋をすることで、園児が自由に走り回れるスペースとして利用可能な計画としている。急な雨でも気にすることなく遊べる中庭デッキは、園児達が遊んでる様子ものびのびしているように感じられます。

クー・べ
ku.be house of culture and movement

所在地 :デンマーク、コペンハーゲン
構造規模:4階建て
建築面積:約3,200㎡
用途  :カルチャーセンター

文化、健康、運動を楽しむすべての市民のために設計されたカルチャーセンター。あらゆる年齢の⼈がより健康的な⽣活をおくるために、演劇、スポーツ、学習を組み合わせ、体と⼼が活性化される空間を提供しています。

日常の「移動」が特別な体験に変わる

日常生活の中で、私たちは無意識のうちに多くの移動をしています。街中やスーパー、商業施設など、さまざまな場面で行われる「移動」が、特別な体験になると考えたことはあるでしょうか?

クー・ベでは、移動そのものを楽しむ仕掛けが随所に施されています。建物内を歩いているうちに、いつの間にか登ったり、滑ったり、這ったり、ジャンプしたりと、動きの可能性を広げる体験が生まれます。ルートは自由に選べ、自分の好奇心や気分に合わせて、思いのままに動き回れる空間が広がっています。

バーネクルチュアフス・アマー
Børnekulturhus Ama’r

所在地 :デンマーク、コペンハーゲン
用途  :こどものためのカルチャーセンター

アマ―ではあらゆる年齢、体格のこども達が優れた芸術と⽂化体験に触れ合うことを⽬的とし、こどもとアーティストの出会いの場を提供しています。
平⽇は毎⽇開いており、学校の休暇中や週末には、フェスティバルや、ワークショップ、コンサートなどを開催し、家族で芸術や、⽂化に触れあうことが出来ます。コペンハーゲン市の⽂化レジャー局により運営されています。

自由に体を動かして遊べるユニークな仕掛け

1階には広場や大階段があり、子どもたちが自由に集まり、遊びやくつろぎを楽しめる開放的なスペースがあります。大階段は登ったり座ったりと、多様な使い方ができ、コミュニケーションの場としても機能します。

創造と癒しが交差する、親子のための特別な空間

2階には、保護者や子どもたちがリラックスして過ごせるカフェスペースやプレイルームがあります。プレイルームの壁には、子どもたちが描いた動物の絵をもとにアーティストが仕上げた壁面アートが飾られており、創造性にあふれた空間が広がっています。

さらに、ワークショップやアトリエ、シアタースペースといったエリアも充実しており、ものづくりやパフォーマンスを通じて、子どもたちの興味や好奇心を育む多彩なプログラムが展開されています。

子どもたちが描いた動物の絵をもとにアーティストが仕上た壁⾯アート(おとぎの森)

リンデハーフェン・プライヤセンター
Linde haven Plejecenter

所在地 :デンマーク、コペンハーゲン
構造規模:6階建て
用途  :⽼⼈ホーム・ケアセンター

新しい都市型ケアセンターであるリンデハーフェンは地域に根ざした⽼⼈ホーム・ケアセンター。
1階はジム、多⽬的ホール、スパ、セラピー、フットケア、美容院、ショップがあり、この地域のすべての住⺠が利⽤できます。2階から6階は居住スペースになっており各フロアに25⼾の居室と共⽤キッチンとリビングルームがあり、居室にはリビング、トイレ、バスルームと簡易キッチンが備え付けられています。

地域とつながる多機能スペース

1階は半公共フロアとして設計されており、地域住民を温かく迎え入れる空間となっています。このフロアには、事務所や会議室、入居者家族の宿泊ルームなど、地域の誰もが利用できる設備が整っています。た、高齢者の健康と生活の質の向上を目指し、フットケア設備やトレーニングジムも併設されています。

北欧アートを感じる調和のデザイン

建物内には、「雲」をイメージした連続的な照明や、たんぽぽの綿毛が空間を漂うようなデザインが施されており、北欧のアートの心を大切にした細やかな感性が感じられます。視覚的な美しさを楽しむだけでなく、各部屋やエリアを自然につなぎ、空間全体に調和と一体感をもたらしています。

心地よさと交流が広がる居住空間

各フロアにはテーマごとのコンセプトルームが配置されており、日常生活の中で北欧特有の「ヒュッゲ」(心地よいひととき)を感じられる設計が施されています。そこには、暮らしを大切にする北欧の文化が息づき、住む人々が快適さと心地よさに包まれる空間が広がっています。

個性的な照明が彩るダイニングルーム

「図書館」の雰囲気を備えたリビングルーム。

広い共用バルコニーでは外の空気を感じながらリラックスでき、開放的なキッチン付きのダイニングルームは食事を通じた交流の場を提供します。さらに、水槽と植物に囲まれたガーデンルームや、旅の雰囲気を味わえるユニークな車窓ルームなど、多彩な空間が心を豊かにしてくれます。

各フロアに設けられた広々とした共用バルコニー。

白を基調とした清潔感のあるキッチン。

水槽と植物に囲まれた、明るくリラックスできるガーデンルーム。

旅先や旅の途中を思わせる雰囲気を演出し、過ぎ去った時代の記憶を呼び起こす車窓ルーム。

デンマークの「⾼齢者福祉の三原則」

デンマークでは⾼齢者は出来る限り⾃宅、それが難しくなった場合でも⾃分に適した⾼齢者住宅で最後まで過ごすことが出来るシステムとなっている。
※所得税55%、消費税25%、⾞の購⼊には280%の税⾦がかかります。

年収の1/3以上が税⾦に持っていかれるのですが社会福祉に関わる財源を全て税⾦で賄っているところに、国⺠の「幸福度」の秘密があります。

①⽣活の継続性に関する原則
②⾃⼰決定の原則
③残存能⼒活⽤の原則

デンマークは1952年に制定された養⽼院(現在の⾼齢者施設の始まり)のガイドラインにおいて、部屋は全て個室と決められています。⾼齢者住宅の居住設置基準は⽇本は原則25㎡であるのに対して65㎡。そこで⽣活していく事が⼤前提の為、各部屋にシャワー、トイレ、台所が完備されており⾃分の慣れ親しんだものや家具を持ち込み⾃分の空間を作り上げています。

質問コーナー

子どもたちのために、園のために何ができるのか。それぞれの園が抱える悩み、疑問を解消すべく園長への質問コーナーを設けました。

建物の遊び心は優先順位を設けていますか。

特に優先順位は設けておりません。何が面白いかは、一つの大きな箱からイメージを膨らませていきました。例えば、普通の倉庫をロフトにする。倉庫の奥には小さな扉を。

園を建てる際の職員とのイメージ共有は行っていたのですか。

職員の意見を重視することを心がけていたため、オープンに話を広げていきました。

植栽をちりばめて配置しているのですが、当初から装飾イメージを持ってプランを行っていたのですか。

装飾は、職員に任せ好きなように飾り付けをしています。