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【対談】<建築×造園>の連携で生みだすこどもの心の「原風景」2

対談者紹介

西武造園株式会社 専務取締役 大嶋聡氏
 西武緑化管理(株)代表取締役を務め、現在は西武造園(株)専務取締役。
株式会社時設計 代表取締役 菊地宏行氏

こどもの自由な遊び方を引きだす、「縁のない空間」の意義とは

菊地 保育園や幼稚園の園庭には普通、遊具があるものですよね。鉄棒に滑り台、ブランコ、砂場……。いずれもこどもが楽しんで遊べる、いわば「王道」の仕掛けですが、私はそのような遊具だけで、はたしてこどもの五感を豊かに育てることができるのか疑問に思ったのです。

大嶋 そのような遊具は運動機能を健やかに発達させることはできますが、「ここから登る」、「ここから降りる」、「ここは入ってはいけない」など、遊び方があらかじめ決められているものです。でもこどもって、「してはいけない」と言われれば、したくなるものですよね。大人が考えた「型」にはめられない遊び方を見つけて楽しむことができる。水たまりがあれば足を突っ込みたくなるし、石堀があれば登りたくなるし、穴があれば入りたくなる。私たちのつくる園庭では、その「したい」という心―こどもの自由で伸びやかな心を大切にしてあげたいと考えたのです。いわば、こどもが自分で遊びのゾーンをつくり、百人百様の遊び方ができる園庭にしたかったのです。

菊地 大嶋さんは、それを「縁(エッジ・ふち)のない」という言葉で表現しておられますね。先に述べられた「バナキュラーさ」、あるいは「自然発生的な不整形さ」を具現化するわかりやすい表現の一つといえると思います。

大嶋 造園ではその感覚が重要です。連続体のデザインというのでしょうか、自然素材で起伏を設けたり、植栽によって変化をつけたりして、特徴づけられたそれぞれの空間を縁で区切ることなく連続させるのです。園庭でいえば、起伏などによってある程度の変化はつけるものの、マウンドや芝山、遊具などが連続的に一体化された空間が良く、加えて、回遊性のある動線を設けることで、こどもたちは園庭におけるそれぞれの空間を自由に動きまわり、また「お気に入りの場所」なども見つけることができます。
多感な時期を過ごすこどもにとって、毎日遊ぶ園庭のシーンは深く心に刻まれます。四季折々、五感を通して楽しんだ草花や樹木の感覚は忘れがたい記憶になり、そのこどもの「原風景」となることでしょう。それはいつまでも心の深い部分に息づく「心象風景」であり、そのこどもの人間形成に大きく影響します。園庭とはそうした場所でありたいと考えています。

【対談】<建築×造園>の連携で生みだすこどもの心の「原風景」3に続く

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