【コラム】「時設計×ディック・ブルーナ」流園舎設計3
いつも自分を見守ってくれる、「死角」をもたない園舎設計
ブルーナのデザインでもう一つ特徴的なのが、独自の平面的な造形です。あらゆるものは「水平と垂直の平面分割」を基本として描かれ、奥ゆきを感じさせないデザインで、それは美術思想「デ・ステイル」における「エレメンタリズム(要素主義)」に大きな影響も受けています。造形でいえば、そのもととなるのは「まる」「さんかく」「しかく」の3つだけ。シンプルを極めた「最小限」のデザインだといえます。
その特徴は絵本の登場人物を見ても明らかですが、シンプルな線で平面的に構成された各キャラクターは、驚くべきことに、つねにまっすぐ前をむいています。これは、ブルーナの「いつも読者と向き合っています」というメッセージの表れ。時設計は、この考えに着想して、園舎設計においては「安全で、こどもたちを見守る設計」という観点で、「保育者がこどもたちのようすをつねに把握できるつくり」をめざしています。
くわえて、ときには絵本の登場人物を園舎の壁面に描くことも。園舎に現れるキャラクターたちの姿は、こどもたちにとっては、「いつだって、すぐそばにいてくれる存在」。うれしいときも悲しいときも、そばに寄り添ってくれるキャラクターたちは、こどもたちを包んでくれる大切な「ともだち」となってくれるでしょう。
また、キャラクターの配置は多い園でも1、2か所と、最低限にしています。これは「主役はあくまでも、園で過ごすこどもたちであってキャラクターではない」という考え方からです。ブルーナとのコラボレーションの園舎では、このような「寄り添い」―こどものそばにいつでも「在る」こと、その空間が生みだす「優しさ」を大切にしています。
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