こども施設の音環境デザイン2【リーチェル幼稚園】
今回は、音環境改善のため竣工後に吸音材を設置した園舎の例を挙げながら、保育施設における音環境の重要性について惟みていきます。
保育施設における「音の問題」と聞くと、近隣への騒音問題が先ず頭に浮かぶかもしれませんが、
こどもたちにとっての「音環境の問題」はとても重要で、もっと着目されるべき事柄であると考えています。
響きを確認した保育室は音環境の改善、吸音材の検討が必要になります。
基本的には、壁と壁、床と天井等、並行する面のどちらか片方に吸音材を設置することで、音が繰り返し反射することを防ぎ残響時間を短くすることが可能です。
しかし、保育室の壁は園児が作った作品や装飾の掲示に利用されることが多く、マグネットやテープが使用できる壁材であることが求められます。
また、吸音材の素材は柔らかく触ると崩れるものもあり、人の手が届く壁よりも天井への設置が望ましいケースが多くなります。なお、吸音材を利用する面積が同じ場合、一か所に集中して設置するよりも、分散して設置する方がより効果的です。
リーチェル幼稚園さんの場合も掲示用スペースを残したいというご希望と、保育室間は可動間仕切りで仕切っているために壁への設置が難しく、天井に吊り下げ型の吸音材を各部屋20枚程度、採用することとなりました。
吊り下げ式の吸音材の利点は、クロスと違い床側だけでなく天井に一度反射し上から降ってくる反射音も天井面で吸音できるため、吸音面の面積増を望めます。
設置後は、部屋で手をたたくだけでもその違いを体感でき、再測定した結果、数値も改善しました。
今後は保育室の音環境を考慮した、吸音デザインの可能性も拡がります。
これまで決められた予算の中で設計を行うために、天井材はほかに比べて後回しされる傾向にありました。園の先生方も床や壁の材料にはこだわりを示されても、園児が直接触れない天井材には着目しない事が多々ありました。
しかし、保育室での音環境に配慮すると、先ずは天井材の選定が大切です。
こどもたち、保育に関わる先生方が適切な音環境のもとで過ごせるよう、計画段階からの吸音デザインを、これからも積極的に実行に移していきたいと考えています。