• 建材・環境

【コラム】「ディティール」と「素材」へのこだわり1

素材について

幼児施設設計の計画において表層の材料については、こどもたちが直接触れるため、安全で安心な建材を選ぶのはもちろんのこと。私たちはそれにくわえて、「新しい園舎でどのような生活をしたいのか」という点を重視して建材を選定しています。その園さんの保育理念や生活スタイルが顕著に現れる部分ですので、先生方と選ぶ作業はとても重要であり、同時にとても楽しい作業でもあります。以前の園舎と同じような素材感の園舎にすることもできますし、まったく一新することもできます。

ひとくちに「建材」といっても、タイルのように昔から利用され続けているものから、近年開発された新しい建材に至るまで、実に多種多様です。それらの最新の情報をキャッチできるよう、各建材メーカーさんなどから話をうかがったり、インターネットで検索したり、アンテナを常に張り巡らせています。

フローリング?リノリウム?拡がる床材の可能性

フローリングは、「ぬくもりのある空間」には欠かせない要素の一つですが、樹種や色によっても室内の雰囲気が替わり、硬さや伸縮も材によって大きく異なります。そこで、実際の部屋の大きさはどうか、はだしでこどもたちが歩くのかどうかなど、その園さんの目指す環境によって、最適な材質をご提案するようにしています。

また、最近では、リノリウムという素材が見直されています。これは天然の亜麻仁油という材料からできていて、抗菌作用もあることから、ここ近年で注目されるようになりました。発色の良いものが多く、手触りもよく、耐久性も高いため、幼児施設には適した素材であると考えています。

リノリウムは薄いシート状の素材なので、さまざまな色のシートをカットして床に模様を描いたりすることができます。天然の色合いなので、どの色も優しいのが特徴。こどもを包み込む優しさを含みつつ、見ために楽しい空間デザインが可能となります。実際に私が担当した浦和つくし幼稚園さんでは、先生と話し合い、教室ごとに違った色づかいの床を採用しました。年少さんのお部屋には入園当初の幼児の気持ちを和ませる暖色系、年長さんには落ち着きのある寒色系を採用しました。

0~5歳までの年齢というのは、感性が育つ大切な時間。こどもたちがいろいろな素材にたくさん触れられること、それを「新鮮」と感じること、素材の「違い」を感じること……。日々触れるものから「楽しみ」を見出せるように建物を計画したいと考えています。

さまざまな素材の組み合わせで互いの良さを引き出すデザインとは、いったいなんだろう?―素材の世界はとても奥が深く、日々研究を重ねています。
吉野達也(建築設計部)

【コラム】「ディティール」と「素材」へのこだわり2へ続く