こども施設の音環境デザイン1【リーチェル幼稚園】
今回は、音環境改善のため竣工後に吸音材を設置した園舎の例を挙げながら、保育施設における音環境の重要性について惟みていきます。
保育施設における「音の問題」と聞くと、近隣への騒音問題が先ず頭に浮かぶかもしれませんが、
こどもたちにとっての「音環境の問題」はとても重要で、もっと着目されるべき事柄であると考えています。
2016年度に新園舎の設計を担当させていただいた認定こども園リーチェル幼稚園さんから、
2階保育室の「響き」が気になるという連絡を受け、残響音の調査に伺いました。
保育室の中心で手を叩いてみるだけで、音環境に問題がある保育室(残響時間の長い保育室)をある程度発見することができます。
全く同じ条件で何度も手を鳴らすことは難しいので、データにばらつきが出ないよう、厚紙で作った3角形の紙鉄砲を鳴らし、機械で測定することで、残響音を数値化します。
リーチェル幼稚園さんの2階保育室を計測したところ、1階の保育室とは異なる音の響きが確認されました。
リーチェル幼稚園さんの園舎の2階は天井が高く屋根の一部は、波うつ大屋根がかけられています。
天井が高い、低いそれぞれの空間をこどもたちが立体的に感じられるように設計しましたが、
2階の保育室3室のうち、特に両端の2室の残響時間が長いという調査結果でした。
環境工学における残響時間の計算式は、【残響時間=室内の体積÷室内の吸音力】ですから、室の体積に比例して残響時間は長くなります。
つまり、大きな部屋程残響時間は長くなるということです。
リーチェル幼稚園さんの2階保育室は3室とも室面積は等しく、仕上げも同じですが、両側の保育室は真ん中の保育室よりも天井高が高いため、残響音が長く計測されたのです。
既存建物の天井高を変えることは難しいですが、室内の吸音力を大きくすれば残響時間は短くなります。
そのためには、壁・天井・床等で音を反射させない、吸音材を利用するという建築的な対応が必要です。
吸音するカーテン布等を取り付けるという方法もあるかもしれません。